行政訴訟判決
- ◆S54. 6.13 東京高裁 昭和52(行ケ)140 選挙無効請求事件(5)
九八条第一項において、「この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律・・・・・・は、その効力を有しない。」と規定している。
そして、第九九条は法律制定過程という動的な面から立法過程に直接参加する国会議員の行為を憲法にしたがうよう拘束し、第九八条第一項は法体系における憲法の最高法規性という静的な面から立法府の制定した法律がその上位の法である憲法によつてその効力を否定されることを宣言したものとするのが一般の解釈である。
したがつて、立法府は憲法に違反しない範囲でのみ法律を制定する「裁量的権限」を有するにすぎないことは憲法上明らかであるということができる。
三 前記判決は、各選挙区に如何なる割合で議員を配分するかは、国会が、「適当に決定する権限を有する。」とし、さらに、「国会が裁量的権限を
有する以上、・・・・・・選挙権の享有に極端な不平等を生じさせるような場合は格別、・・・・・・立法政策の問題」であると説いた。
しかし、これは少くとも不正確である。
前述のとおり、立法府は憲法に違反しないよう法律を制定する義務があるから、右判決の表現を借りれば、国会は議員定数の配分について憲法に抵触しない範囲でのみ「決定する権限」を有するにすぎず、また、憲法に抵触しない範囲でのみ「立法政策の問題」となし得るにすぎない。
もし、右判決が、右の範囲を超えた意味において国会に議員定数配分の「決定権限」を認め、「立法政策の問題
」としているのであれば、それはすでに不正確の域を出て明白な誤りである。
第三 憲法と議員定数配分(その一)
一 国会議員の定数配分は、憲法第四三条第二項および第四七条の二規定からみて、法律制定権を有する国会のみが決定する権限を有し、他の国家機関が決定することの許されないものであるという意味においては、なるほど国会=立法府の専権事項である。
しかし、国会は憲法に抵触しないよう議員定数を配分しなければならず、その配分が憲法に抵触する場合には「効力を有しない」(憲法第九八条第一項)こともすでに明らかとなつた。
そこで
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