行政訴訟判決

行政訴訟判決

  • ◆S54. 6.13 東京高裁 昭和52(行ケ)140 選挙無効請求事件(7)

 

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価値」に差の生じた原因が、憲法第一四条第一項後段に列挙する社会的身分等の事項に該当するか否かの議論は、その事項が例示的なものであるとの確立した判例がある現在では問題とする余地がない。
結局、本件訴訟における憲法第一四条第一項の適合性の問題は、「投票の価値」に差がある場合、それが「合理的根拠」に基づくか否かの議論が残るだけである。
(一) さて、憲法第一四条第一項に関する違憲立法審査の判断基準が「合理的根拠」の有無にあり、その有無は実質的に検討されなければならないとの考え方は、多数の判例が示すところですでに確立した判例といえる。
前記昭和三九年二月五日の最高裁判所大法廷判決が、人口比率以外の幾多の要素を考慮に入れて議員定数の配分を決定することも不合理とはいえないと判示しているのも、「投票の価値」

 の差についても「合理的根拠」が判断基準になることを示すものであろう。
そこで、「合理的根拠」とはいかなる内容を有するかが問題となる。
尊属殺人の規定を憲法第一四条第一項違反とした昭和四八年四月四日最高裁判所大法廷判決における田中裁判官の補足意見はこれを次のように説明している。
「日本国憲法一三条の冒頭に、『すべて国民は、個人として尊重される』べきことを規定しているが、これは、個人の尊厳を尊重することをもつて基本とし、すべての個人について人格価値の平等を保障することが民主主義の根本理念であり、民主主義のよつて立つ基礎

であるという基本的な考え方を示したもの」であるから、「民主主義の根本理念に鑑み、個人の尊厳と人格価値の平等を尊重すべきものとする憲法の根本精神に照らし、これと矛盾抵触しない限度での差別的取扱いのみが許容される」ものである。
われわれもまた、「人格価値の平等」を保障することが民主主義の根本理念であると考えるし、現行憲法第一三条はその根本理念を憲法規範として示したものであると考える。
この「人格価値の平等」こそ、ヨーロツパにおいて君主制を打倒し、わが国において天皇制を崩壊せしめ、さらに独裁制を打破する民主主義の根本理念である。

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