行政訴訟判決

行政訴訟判決

  • ◆S54. 6.13 東京高裁 昭和52(行ケ)140 選挙無効請求事件(8)

 

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本件で主張している選挙制度の問題は、正に、現行民主主義憲法の下における民主主義的自治の問題であり、その選挙制度の中に実現されなければならない自治は、「人格価値の平等」に基づく自治である。
代表民主制下においては、古くルソーによつて指摘されたように、国民は「議員選挙の間だけ自由である。議員の選挙がすんでしまえば、彼らは奴隷生活を送るものであり、皆無である。」ことは、現在においても変ることはない。それゆえに、国民に与えられた政治手続に参加する機会は選挙だけということになり、国民が民主主義的自治の権利を行使する機会は投票のときだけということになる。
そこから生まれる当然の結論は、投票において民主主義的自治が完全な形で実現されなければならないということ、換言すれば「人格価値の平等」という民主主義の根

本理念が有権者の一票に徹底的に貫徹されなければならないということである。
アメリカの判例上確立された「一人一票」(one man one vote)の原則もまた、民主主義の右根本理念から導き出された原則と考えられる。
このように民主主義においては、「人格価値の平等」が前提となつているがゆえに、主義、主張の異なる一有権者の意思(投票)を単純数値「一」で表わすことができ、選挙を支持票の数という単純数値で決することができるのである。
したがつて、有権者の意思(投票)の数値が単純数値「一」で示され得ない選挙は、民主主義の根本

理念である「人格価値の平等」に反することになり、現行憲法の下では憲法違反となる。
これが民主主義憲法の要求する平等選挙か否かを判断する「合理的基準」にほかならない。
(二) 「人格価値の平等」要求は、一選挙区内の問題か、他の選挙区との関係も問題になるかという点はどうであろうか。
全国規模の選挙を行なう方法として選挙区を全国一区とするか、全国を多数区に区割りするかは「技術上の問題」であり、民主主義そのものとは直接関係ないことである。
何故なら、冒頭で述べたように代表制を採用するか否かが「技術上の問題」である以上、

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