行政訴訟判決
- ◆S54. 6.13 東京高裁 昭和52(行ケ)140 選挙無効請求事件(9)
その代表制を形成する過程に過ぎない選挙制度が、より低次元の「技術上の問題」であることは明らかであるからである。
したがつて、全国一区か多数区かの問題もそれ自体は、技術の選択という意味において、「立法政策の問題」(前記最高裁判所判決の表現借用)に属する。
ただ、その具体化された制度の実態が民主主義に適合しているか否か、換言すれば、民主主義の根本理念である「人格価値の平等」に従つたものか否かの問題を生ずることがあるというにすぎない。
われわれは、その点について、全国を多数区に区割りすることには、現代における技術上の問題として、それなりの合理性があると考えており、現行の多数区制は民主主義の理念から検討しても、なお民主主義に違反しているとは考えない。
したがつて、われわれは本件訴訟において、全国
一区の選挙を採用しなかつたことを問題にするものではなく、また公職選挙法別表第二の「選挙区の区割」自体を問題にしているのでないことも、繰返し述べているとおりである。
しかし、多数区への区割りが適法だとしても、その多数区への区割り後に配分する議員の数いかんによつては、民主主義の根本理念である「人格価値の平等」が侵害されることになることは明らかである。そして、議員定数配分が「人格価値の平等」を実現しているか否かは、議員一人あたりの平均有権者数という単純数値からの偏差等によつて判断できる。
本件参議院地方選出議員選挙が全国
民の代表を選出する選挙であり、その選挙に全国の有権者全員が投票する権利を有していたことは明らかである。
また、国民はすべて「人格価値が平等」であるから、全国の有権者は本件選挙において、すべて単純数値「一」で表わされる同価値の投票権を有すべきである。
その単純数値「一」とは、全国有権者総数を本件選挙で選出された議員数で割つた数値を分母とした「一」であり、その分数値と各選挙区における有権者数をその選挙区に配分された議員の数で割つた数値を分母とした「一」とが一致したとき、初めて全国の有権者はすべて単純数値「一」という同価値の投票
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