行政訴訟判決

行政訴訟判決

  • ◆S54. 6.13 東京高裁 昭和52(行ケ)140 選挙無効請求事件(25)

 

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理由により右見解には賛同できない。
1 司法は本来具体的権利義務に関する紛争の解決を目的としているものであつて、あらゆる紛争をすべて救済する万能の制度ではなく、民衆訴訟の如きは法の制定により初めてその救済が認められ、しかもそれがその法により司法の権限とされたとき初めて司法に属せしめられるに至るにすぎないから、裁判所はその制定法の要件の範囲内で裁判権を有するものといわなければならない。従つて、政治的権利も基本的人権に関わるとして民衆訴訟を不当に拡張解釈することはその制定法の精神に反するものであり、当事者の厳につつしまなければならないところである。
2 また、更に本件のような事態は立法当時予想していなかつたから適当な救済立法が存在しない現状では右第二〇四条を拡張解釈することが許されるという見解がある。し

かしながら立法当時予想していたか否か等の論議は法の制定により初めて認められる民衆訴訟には全く無縁なことというべく、そのような論議より現に救済手段が存在していないこと自体にそれなりの正当な理由が存在していることを知らなければならない。即ち、本件の如き事案につき救済制度が存在しないのは、選挙権は政治的権利のひとつではあろうがその内容は選挙区、議員定数等の選挙制度の在り方によつて種々異なることが考えられ、その如何は現在並びに将来の国政のあり方に重大な影響を及ぼすものであつて、もともと憲法上政治の分野において決着をみることが要請されており、具

体的な権利義務の紛争の解決を目的とする司法判断の対象たるには本質的に適しないが故に、救済規定が存在しないのである。要は、司法の効果的運営とそれに対する国民の信頼を保つ第一の方途は司法救済の限界を明らかにすることにあるのではなかろうか。
別紙(四) 請求棄却を求める理由
被告準備書面(一)ないし(三)
被告準備書面 (一)
本件請求は次の事由によりその理由がなく棄却を免れない。
本件における選挙人の投票価値の不平等とは要するに地方区選出議員の選挙区別定数の不均衡をさしているものであるが、本来選挙区別定数をど

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