行政訴訟判決
- ◆S54. 6.13 東京高裁 昭和52(行ケ)140 選挙無効請求事件(31)
投票価値の平等を侵害しているものであるから、憲法第一四条第一項に違反するとし、本訴を公選法第二〇四条に基づく選挙無効訴訟として提起しているものであるところ、本訴が同条所定の三〇日以内である昭和五二年八月八日に当裁判所に提起されたものであることは本件記録上明らかである。
ところで、被告は、本件訴を不適法であると主張して、その却下を申立てている。
右申立の理由は、要するに、本件のように投票価値の平等を侵害されたことを理由とする訴は、公選法第二〇四条の訴の要件に適合しないものであり、裁判所は、制定法の範囲内で裁判権を有するに過ぎないから、投票価値平等の要請が国民の基本的人権にかかわり、これに対する侵害につき他に適切な救済手段が存しないからといつて、本件のような訴について同条を適用して出訴を許すことは、民衆
訴訟である同条の不当な拡張解釈であつて不適法である、というに帰するものである。
しかし、本件訴の理由とする投票価値の平等が侵害されているか否かという事項は、その固有の性質上、裁判所による判断を不適当とするものではなく、憲法上明文をもつて立法府あるいは行政府の専権的判断事項として定められているものでもないから、一般に裁判所において判断することは妨げないというべきである。
そして、公選法第二〇四条が、本来は選挙の管理、執行に瑕疵があつた場合に関する規定であるとしても、選挙人が議員定数配分の不均衡の故に、憲法上保障されている選挙
権の平等が侵害されたとして裁判による救済を求めている場合に、右のような訴が前述のように本来、裁判所による判断に親しむにもかかわらず、公選法第二〇四条の訴の要件に適合せず、かつ、他に救済方法も存しないとして、救済を拒否することは、そもそも同条が選挙の執行、管理上の瑕疵についてすら救済を認め、公正な選挙の実現を図つていることと権衡を失し、法の趣旨、目的から乖離するばかりか、他に適切な救済の方途も現行法上認められない以上、憲法上保障されている基本的人権に対する侵害を放置する結果となるものであり、従つて、このような結果を生ずることを避けるため
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