行政訴訟判決

行政訴訟判決

  • ◆S54. 6.13 東京高裁 昭和52(行ケ)140 選挙無効請求事件(37)

 

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の全趣旨により当事者間に争いのないものと認められる昭和四〇年、四五年、五〇年の各国勢調査の結果による人口数((別紙(四)の被告準備書面(三)の別表記載のもの))によつてみると、昭和五〇年には宮城と福島、昭和四五年には右のほか、埼玉と福岡、昭和四〇年には以上のほか、神奈川と愛知、北海道、岐阜と熊本、鹿児島、宮城と熊本、鹿児島、福島との各相互間においては、生じていないことが認められる。)。
そして、一般に右のような逆転現象がいかなる程度に達すれば、本件議員定数配分規定が全体として憲法の選挙権平等の要求に反する不合理なものと判断すべきかは一応問題であろうけれども、右認定のとおり本件選挙当時におけるように、前記(1)に判示した議員一人当り有権者数の格差にとどまらず、多数の選挙区間で多岐に亘つて顕著に逆転関係が生じ

ているというようなことは、前述の人口比例の原則の下においては、とうていその合理性を肯定し得ないことが明白というべきものであり(府県制をとつていない北海道につき、特殊事情があるとして同選挙区に関する逆転関係を考慮の外におくとしても、この判断を動かすことはできない)、かつ前記(1)の判断において考慮した事情(ちなみに右逆転関係の是正は(1)の場合ほどに技術的困難は大きくないと考えられる)を酌んでも、なおこれをやむを得ないものとすることはできないと考えられる。以上により、本件選挙当時、本件議員定数配分規定の下における各選挙区間の定数配分は、

憲法の選挙権平等の要求に反するに至つていたものと判断するに十分というべきであり、国会が一般に状況変動に対応して政策的裁量をなし得るとしても、もはやこれを考慮に入れても右の判断を左右することはできないものというべきである。
(五) しかしながら、右の事から直ちに本件議員定数配分規定を違憲と断ずることは、以下述べる理由により困難というべきである。
すなわち、前認定によれば、本件議員定数配分規定は、その制定当初から憲法の投票権平等の要求に反していたものではなく、制定後の人口移動によつて次第に右の要求に適合しなくなるに至つたものと

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