行政訴訟判決

行政訴訟判決

  • ◆S54. 6.13 東京高裁 昭和52(行ケ)140 選挙無効請求事件(38)

 

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いうべきであるが、このような場合に、いかなる時点において憲法の要求に反する不平等の状態になつたものと判断すべきかについては、必ずしも客観的に明白な判断基準があるわけではないから、右時点を確定するに困難を伴うもので、結局は第一次的には国会の適切な判断にまつよりほかなく、しかも過密区と過疎区等との人口偏差が時とともに変動する可能性をはらむ流動的な事態の下において、右変動に対応して議員定数配分規定の頻繁な更正をすることは制度上相当でなく、実際上も困難であること等を考慮すると、本件議員定数配分規定につき、いついかなる時点において是正の方途を講ずべきかは、是正の内容とも関連し、将来の人口移動の予測その他諸種の政策的要因を斟酌してなす国会の合理的裁量に委ねられていると解すべきものである(ちなみに、本件議員定数配分規定に関し

ては、衆議院議員の定数配分規定である公選法別表第一についての「本表は、この法律施行の日から五年ごとに、直近に行われた国勢調査の結果によつて、更正するのを例とする。」とのような添書が存在しない。)。
従つて、そうであるとすれば、裁判所は、当該議員定数配分規定による定数配分が憲法の選挙権平等の要求に反するに至つていると考える場合においても、その故をもつて直ちに右規定を違憲と断ずべきものではなく、合憲、違憲の判断時点の確定の難易及び是正方法の難易、国会の対応態度、是正実現の期待可能性その他諸般の事情を斟酌し、是正実現のために既往の期間

を含めてなお相当期間の猶予を認めるべきものと考えられるときは、右期間内は是正問題は、いまだ国会のいわば裁量の手中にあるものとして違憲の判断を抑制すべきものと解するのが相当である。(六) そこで、右の観点から以下、本件議員定数配分規定について、その是正の難易及び国会等関係機関における従来の是正実現への対応ないし是正論議の内容、経過に関して検討する。参議院地方選出議員の選挙区及び定数をいかに定めるかについては、参議院全体あるいは全国区、地方区のそれぞれのあるべき構成、機能ともかかわる問題ではあるけれども、それは措いて、前述

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