行政訴訟判決

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  • ◆S54. 6.20 東京地裁 昭和51(行ウ)48 法人税額更正処分等取消請求事件(14)

 

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目的として取引を行つたからといつて、そのこと自体を直ちに不当な租税回避行為とみるのは相当でなく、また、右取引が相手方の利益をも目的としていたことによつて同法の適用を否定すべき理由もない。また、原告と都自動車とが代表者を同じくし資本的にも密接な関係のある同族会社であつたことは当事者間に争いがなく、右事実と証人Dの証言及び弁論の全趣旨を総合すると、都自動車は昭和四五年当時本件買換資産を手離さなければならないほどの経営状態にあつたわけではなく、原告も、被告の主張するような代金相殺の方法によるのでなければ、これを取得しうる資金的余裕はなかつたのであるが(原告が譲受代金と都自動車に対する貸付金とを相殺したことは当事者間に争いがない。)、両者間で本件買換資産の譲渡をすることにより原告において旧措置法六五条の四、五の適用を受

ける方が双方にとつて全体として利益であるとの判断から、本件の譲渡及び貸付をするに至つたものであることが推認される。しかしながら、右のような特別の関係に基づいてされた取引であつても、それが取引上ないし経済上の合理性を無視して行われたものでない限りは、課税上の見地からこれを目して恣意的な取引ということはできないところ、本件における原告と都自動車との間の本件買換資産の譲渡及び貸付についてその譲渡対価や賃料その他の貸付条件が通常の取引に比して不自然、不合理なものであつたと認めるべき的確な証拠は存在しない(賃料額の相当性について当事者間に争いが

あるが、被告の再反論一掲記の算式のうち資本利子一〇パーセントとあるのを市中金利並みの年八パーセントに改めて計算すると、四、七八六万二、一〇六円となり、約定賃料が著しく低額であるとはいえない。)。
してみると、被告の前記主張は失当というほかはない。被告は、本件のような場合にまで旧措置法六五条の四、五の適用を認めるとすれば、同種取引を反覆することによつて永久に課税が繰り延べられることになると主張するが、当該取引が経済上の合理性を失わないものであることを要件とする限り、実際上被告の危惧するような不都合な結果を生ずるとは考えがたい。

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