行政訴訟判決

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  • ◆S54. 6.26 東京高裁 昭和52(行コ)56 所得税更正処分等取消請求控訴事件(16)

 

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たがつて、非事業用資産の取得のために要した借入金の利子は、社会生活を維持するための費用にすぎず、いわゆる家事関連費にすぎないのである。
(三) なお、所得税基本通達三八−七は、固定資産の取得のために借り入れた資金の利子のうち、当該固定資産の使用開始の日までの期間に対応する部分の金額を取得費等に算入する旨認めているが、それは、法人税の場合に、使用開始前の借入金の利子につき取得価額に算入するか、費用に算入するかを全く法人の任意処理に委ねており、また個人の場合でも事業用資産については右法人税の場合に準じて取り扱つていること(所得税基本通達三七−二七)との比較上、政策的に調整措置をとつたものにすぎないのであつて、個人の非事業用資産についての借入金利子は、本来、使用開始前といえども取得費を構成するものではない。また

、右通達は、借入金利子を取得費に算入するか否かにつき、もつぱら当該資産を使用し得る時点(使用開始)を基準として、使用開始までの期間に対応する利子は取得費に算入し、使用開始後の期間に対応する利子は維持費であつて取得費を構成しないとしているところ、土地についてはその現況自体に本質的変更を加えず使用する限り何時でも使用し得る性格のものであるから、原則として土地の取得即使用開始と解すべきである。このように解することは、土地が時の経過に伴い価値を減少することがあり得ないばかりか、近時においては投資投機の対象として利用されてきたという実情があり、

土地取得の時が正に原価性を有するものであり、それ以後は土地の値上り利益として考えられるという点からいつて合理性がある。ところで、原告が本件土地の所有権を取得したのは農業委員会の転用許可書の交付を受けた昭和四三年一二月三日であつて(売主との間に所有権移転の時期についての特約は存在しない。)、原告の主張する借入金利子はすべて本件土地の取得後支払われたものであるから、前記のとおり右通達によつても本件借入金利子が取得費に算入される余地はない。
(四) さらに、原告の確定申告にかかる本件土地の取得費のうち、借入金債務担保のための抵当権設定

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